夏の横取り

うまれてはじめてロイヤルホストに行った。わたしは小さなピザを、恋人はオムライスを頼んだ。パフェを食べたかったので少なめに頼んだ。ほんとうのところ、ロイホは何を頼むべきところなのかがわからなかった。四つほど離れたテーブルでアルバイトの面接をしていた。盗み聞きしようと思ったけれど聞こえなかった。

手の甲にマニキュアがついていた。家を出る前にささっと塗ったので手に飛んでしまったのだろう。マニキュアついてるわあ、と恋人に見せて、足にマニキュアを塗ったことを話した。恋人は「え?見えへんくない?」と言う。「今日はサンダルで来たよ」と伝えたら、恋人はテーブルの下を覗いた。

「ほんまや。夏の横取りやな」

と、恋人は言った。はてさて、ツッコむかどうか悩んでいたら自分で気づいて「あ、先取りかあ」とはにかんだ。「夏あげるよ、暑いから」と言われたけれど、いらない。

食後にマンゴーのパフェがやってきた。これが夏の「横取り」かあ、と思う。それからわたしは眠るまで幾度となく思い出しては笑ってしまった。

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