2/5-2/11

2/5 雨

昼頃、父が亡くなった。五十五歳だった。

母の礼服を出す。パンツのものとワンピース。わたしはパンツのものを、上の妹はワンピースを着ることになった。下の妹は制服。ジャケットのボタンが取れていた。母は家にある黒い服から手ごろなボタンを探した。

 

2/6  くもり、一時雨

京都へ。「(体が)元気ならごはんに行こう」と誘ってくれた。

四条駅で乗り換えるとき「これ志津屋のパンより美味しいねん」と話しているひとがいた。その会話に気を取られて、流れるようにSuicaをタッチしたら、改札に引っかかった。

河原町から烏丸の地下道で泣いた。泣きながら怒ったり笑ったりして情緒がおかしかった。人が死んでも生活は止まらない。そんなこと知らなかった。

 

2/7  くもり時々雨

電車で琵琶湖を一周した。恋人の勧めだった。きっと家にいたらひとりでめそめそするからそう提案してくれたのだろう。駅に着くころ雨が降った。グッバイ洗濯物。本とコーヒーを買って、山科まで出る。そこから湖西線に乗る。大津京の待合で四十分ほど電車を待った。敦賀行きの新快速に乗り、北上。湖側の席に座る。時折、琵琶湖が見える。雨が止んだ。『石狩少女』を読み終えた。

近江塩津で乗換。播州赤穂行き。車内の電光掲示板に播州赤穂までのすべての停車駅が流れた。帰りも湖側に座った。日が差した。『伊勢物語』を読んだ。

 

2/8 くもり

信楽へ。ひんやりしていた。あちらこちらにたぬきがいて、かわいい。十センチほどのたぬきを買った。目がきゅるんとしている。机に飾るつもり。

 

2/9 

二回泣いた。一度目は母の前で、二度目は夜中に泣いた。四年会っていなかった(十七年一緒に暮らした)父が亡くなるだけでこんなにもかなしい。心臓を裂かれるような心地。

 

2/10 晴れのちくもり

父の直葬だった。死んだ父はわたしが知っている父と姿が違った。ほんとうに死んでしまったのかしら。まだどこかで生きていそう。と思った。父の名前に「故」と付いていた。それが死んだ証のように思えた。下の妹がわたしたちの似顔絵を描いてくれて、そこに寄書きをして棺に入れた。

帰りに花を買った。ももを買った。わたしの名前は花のももからきている。夏生まれだけど。花瓶に入れたら窮屈そうだった。ももを見ながらひとりでお酒を飲んだ。

 

2/11 晴れ

梅田で御堂筋線に乗り換える。看板に違和感を覚える。記憶にあるものと間違い探しをする。千里中央までだった路線が駅の開業により延びていた。三月から箕面まで行けるようになるらしい。

心斎橋駅で降りる。神乃珈琲へ。『め生える』を読む。立春ブレンドとフレンチトーストを注文した。メープルシロップをひたひたにかける。

なんばまで歩く。人が多い。なんばパークスシネマで『哀れなるものたち』を観た。ずっとどきどきしていた。音楽がそうさせたように思う。帰りの電車でサントラを聴く。

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